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Newsletters

Letterbox

たまには慣れない技術をさわろうと調べ物をはじめると、その技術の weekly や newsletter を名乗るメール配信サービスが目に付く。 たとえば Go には Golang Newsletter、Android には Android Weekly、 データサイエンスには Datascience Weekly がある。$要素技術名 {newsletter|weekly} で検索すると8割がた何か見つかる。 ずっと昔から続いているものもあるけれど、ここ数年で特に増えた様子。流行りの newsletter を紹介する記事も一年に一回くらい誰かが書いている。

よく知られた weekly のひとつ Ruby Weekly の発行者 Peter Cooper が ニュースレターの配信をはじめてみた感想を 2010 年に書いている。 2012 年にはメール配信サービス Mailchimp が彼をインタビューしている。 Mailchimp のようにモダンなメール配信サービスがニュースレターの普及に拍車をかけた面はあろう。配信用の CMS や、各種メトリクスの集計など、色々手厚い。 もともと Blog に書いていたニュース記事をメールに切り替えた経緯を読むとメール嫌いのフィード世代としては複雑な気分。 もっとも Ruby Weekly をはじめ多くのニュースレターは RSS/Atom も配信している。

同じメールメディアでも、有名人がやってるメルマガみたいなやつと Newsletter は毛色が違う。大半は無料だし、書き手は個性を主張しない。 テーマにあてはまるウェブの記事をリストにまとめて送ってくれる。それだけ。簡素でいい。 (有名人レターにもそれなりの良さはある。たとえば私は Benedict Evans の newsletter がけっこう好き。)

さて、ニュースレターはフローでもストックでも読める。

まず定期購読して流し読むフロー路線。熱心ではないけど眺めてはおきたい、そんな距離にある要素技術のニュースレターを購読する。 ニッチなせいか、要素技術の話題は思ったほど Hacker News や Programming Reddit が拾ってくれない。 そもそも総花的のサイトは流量が多すぎて真面目に追っかけるのは辛い。ニッチなコミュニティ (Subreddit, Twitter, Blog) も流量が多いのは同じ。入り浸る気力がわかない。 ニュースレターはそんな人の助けになる。選者のバイアスを受けたり時差で会話に参加できないなど欠点はあるけれど、よそ者として読むならよかろう。

定期購読だけでなく、バックナンバーををまとめ読む楽しみもある。たとえば Go をさわろうと決めたとする。一通りの入門をこなすと同時にニュースレターのバックナンバーを眺める。 何に使われているのか、何が流行っているのか、何に困り、どう解決しようとしているのか。技術をとりまく空気がわかる。読んだところで自分の生産性が上向くわけではない。 でもその技術を使って人々が楽しくやっている様子には励まされる。コミュニティの中には外から見えない熱気がある・・・それがまだ生きている技術なら。

そういう意味で、ニュースレターの存在は要素技術の温度を計るひとつの指標にもなりうる。若すぎる、あるいはニッチすぎるテクノロジにはまだニュースレターがない。(例: Julia, ReactiveX.) 枯れたテクノロジーの背後にはニュースレターの屍が連なっている。(例: C++, Java. なお Java には現役のニュースレターもある。) ただし手堅い指標とするにはノイズも多い。たとえば Rust はすごく元気なはずだし Python もまだ枯れ果ててはいないはずだけれど、 どちらのニュースレターも発行が滞っている。飽きっぽい発行人を持ってしまった不幸といえる。

ネット中毒気味なプログラマがその成果をまとめるのにニュースレターは良い媒体かもしれない。 Mailchimp は購読者1000人まで無料で使えるらしい。私もなにかニュースレターしてみようとアカウントを作ってみたものの、 よく考えたら人に配れるほど熱心におっかけている話題がなかった。無念・・・。

購読するニュースレターを探したい人は、適当に検索するか awosome-weekly などのリストを参照するのがよいのではないでしょうか。


写真: https://flic.kr/p/gs8Pt1