2004-08-16

近況

ジャグンリングの技を数学的に記述する "サイトスワップ記法" の存在を知って以来, 他にも数学的に記述できるものがないかとぼんやり考えるようになった. その候補にと思いついたネクタイ. ふとんの上に実物を広げ悩むも良い手は思いつかず, ふと google で検索したところ, 見事に先客あり: "Theory of Tie Knots" (Thomas Fink and Yong Mao, 1997)と題された結果は Nature に載り, 本になり, 日本語訳され文庫もあった. なんとなく悔しい. さっそく paper "Tie knots, random walks and topology" (PDF) を読んでみた. 私の目論んでいたタイの交点を列挙する方法は "a tedious and often nontrivial task" と一蹴されており, ちょっとへこむ. 著者らのアプローチでは, タイの太い方の端を移動する順番に着目する. 結び方の一意性, 妥当性を容易に検証できるアイデアは見事.

続けて著者ら自身による解説本 "ネクタイの数学" へすすもう. (訳者の青木薫は科学読物界の柴田元幸といっても褒め過ぎでないと思う. 優れた目利きと軽快な訳文はいつも見事.) 1 章はネクタイの歴史を概観し, 2 章で件のモデル化を解説する. 目玉は 3 章, このモデルによって列挙したネクタイの結び方一覧 85 種類 +a だ. これが網羅的でいい. "フォーインハンド" や "ウィンザー" といったメジャーな結び方だけでなく, "プリンス・アルバート" や "バルチュス" など聞いたこともないもの, そもそも名前のついていないものが並ぶ. 眺めていると片っ端から試したくなる. が, あいにく私はスーツ勤務ではないのだった ... 外回りにつれてってくれー.