2005-07-31

近況

局所大掃除を敢行. 今年に入ってから急に本が増え, それらの多くを部屋に積んだままにしていた. エントロピの閾値を越える前に対処することにする. おおよそ 40 冊. 本棚は既に full なので, まずは本棚の前に移動しておこう. 今後は計算機関係の本を箱詰して本棚から追いだそうと思っている.

積まれていた読んだ本 : メンタリング

同僚とメンタリングの話になり, その勢いで. 自己啓発本ではなく, 企業の従業員に対するインタビューを分析した社会学の本. こうすればよいという指示ではなく, こうなっているという観察と分析が中心. メンタリングという視点から企業内での人間関係のあり方が広く述べられており, 面白かった.

積まれていた読んだ本: : 初めてリーダーとなる人のコーチング

典型的なコーチングの本. 読者が白い歯を見せて笑うさわやか前向き好青年の人格者であることを前提としているのが気に喰わない. 現実的でないからだ. 欠陥のある人間も立場上誰かを指示, 教育しなければいけないことがある. そういう人間にこそ方法論による支援が必要なはずだ. これはそうした読者に合わない. リーダーになるべくホワイトニングを欠かさない人向けの本.

積まれていた読んだ本: : コーチングのプロが使っている質問力ノート

質問ドリブン至上主義の本. 出てくる例が見事に予定調和なところに苦笑する. いくらか具体的な指針を含む (かっとしたら深呼吸しろなど) のは良い. ただし, それを動機づける説得力は薄い.

積まれていた読んだ本 : 消滅する言語

マイナーな言語が滅びつつあるという話. 絶滅危惧種との比喩はわかりやすい. 相手が動物でなく, マイナー言語の利用者であるだけ傲慢さが目立つ. しかし自分のそうした傲慢に自覚的な人が保護運動を精力的に進めるのは難しい気もする. 信念とはある種の盲目なのだろう. 自分のためというより人類のためという方が資金繰りもしやすいだろうし.

積まれていた読んだ本 : 本を読む本

本の読み方には積極性に応じてレベルがあり, その技術を見につけてコントロールできるようになりましょうという話. レベルは初級読書, 点検読書, 分析読書と三段階にわかれている. "分析読書" は多く参照される, あるいは歴史を生きのびたような名著を読むための手引で, 点検読書はもっと日常的な読書の話. 本書は分析読書の話が中心だが, "点検読書" の方が機会も多く, それに長けると実入りが良い. 計算機関係の本に限っていうと, "分析読書" の対象となるような名著は読者の理解を助けることに非常に多くの労力を割いており, 読者はそう高度な読書技術を要求されない. 他の分野の名著 (たとえばである ホッブスの "リヴァイアサン" や カントの "純粋理性批判") を読むよりはずっと楽だろう. かわりに数式や証明のトレースという別の技術を要求される.

でも "アナリシスパターン" のように上流工程な本は "リヴァイアサン" に近いのかも. (読んだことないけど.)

積まれていた読んだ本 : 東京ねこまち散歩

貰いもの. 私は散歩や街歩きの本が持つ知ったかぶりや, 知ったかぶり素材の雰囲気があまり好きではない. この本はそういう嫌な感じがしなくていい. 猫の世界にお邪魔する余所者という, 著者の視点がいいのかもしれない.

積まれていた読んだ本 : 現実入門

歌人の穂村弘がダメ人間の代表として, "現実" のイベントにとりくむというエッセイを纏めたもの. 現実とは例えば "献血" とか "結婚式" とか "合コン" とかそんなもの. 穂村弘のダメ人間ぶりは作り物めいていて計算高い. まっとうな読者として読むと, 安心して "ダメ人間" を楽しむことができる. 軽やかで, 適度なフィクションとユーモアのある文章が楽しい. 精神的な危機に晒されることはない. 逆にダメ人間の視点から読むとまったく共感できない. どろどろしたところが何もない清潔さが鼻につく. 文章の上手さがそれを際だてる. 枡野浩一のコメント は的を射ている.

穂村弘の短歌は好きです.

積まれていた読んだ本 : 熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き

久しぶりに小説を読んだという気分になれた. 挫折と確信を巡る短編集. イーサン・ケイニンに似ていると帯に書いてあったけれど, たしかに似ている. しかしケイニンほど温厚ではない, クリアな書き口. 秀逸なのは表題作と…とページをめくったら一遍読み残しがあったことに気付く. 不覚ながらも得した気分.

積まれていた読んだ本 : アメリカの鱒釣り

柴田元幸が翻訳について示唆を得た一冊とのことで. そのへんはさておき. ブローディガンはいいな. 東海岸ではないアメリカの, 屈折しながらも悲観的ではない別の形の, 理不尽なまとまりのようなもの, そんなの.

積まれていた読んだ本 : 人生のちょっとした煩い

たまには村上春樹(訳)も読もうと思い. 普通に面白かった. 主人公は女性なのだけれど, 出てくる男達が妙にとぼけた感じでよい.

積まれていた読んだ本 : ケータイ・ストーリーズ

ケータイで読める長さで書かれた "一人の男が飛行機から飛び降りる" のようなショートストーリーをまとめたもの. 実際ケータイ向けに配信されたものらしい. ケータイで読むならいいのかもしれないが, 本で読むとかなり物足りない.

積まれていた読んだ本 : となり町戦争

表題どおりの舞台設定や小物の作りなどは非常に面白く, 読ませる. ただ設定の面白さに登場人物の造形が負けてしまっている. いわゆる小説としては食いたりない. 設定やディティールの面白さを生かして, ライトノベルや漫画にリメイクしたら面白い気はする.

積んであった読んでいる本 : It Was a Dark and Stormy Night, Snoopy

スヌーピーの選集のひとつ. 寝る前に気がむいたら 2,3 ページ読むかんじ. 和む.

積んであった読んでいる本 : 壁の文字

ポール・オースターの詩集. これも寝る前に気がむいたら少しずつ. あと会社に行きたくない時. 言葉と概念の世界に逃げこむことができる.

Lifecycle of a Book

なぜこう本が, 特に読まない本が増えるのか. そもそも私が購入した本はどのような運命をたどるのか. Bugzilla にならって図示を試みる.

読まない本が増える理由はいくつかある. まず, 積読は概念上ではキューだが, 物理的にはスタックであること. いつまでも pop されず, やがて expire してしまう. 次に, 私が表面上のスループットを追求するために優先順位を改変していること. 表面上のスループットとは冊数のことで, 重い, 暑い, 英語, といった一冊あたりの所要時間の長い本は優先順位を低く設定され, やがて expire する. 両者に通じるのは一定時間後 expire するという本の性質. 忘れがち(目を背けがち)な事実だが, 重くとも重要な本を読むためには自覚しなければいけない. 買ったらすぐ読もう. 間をあけず読み終えよう. そして, 衝動買いは控えよう...

amazon.rb

tDiary の isbn_image プラグインで画像が表示されないと思ったら, URL が変わったので要 patch とのこと. (樂水開発日記) 以下の手順で復帰.