2004-09-12

近況

炊飯器でホットケーキを炊く. フライパンでなく炊飯器なのは, 料理研究家のハッカー精神を讃えてのこと. この炊飯器料理はまさにハック -- a quick job that produces what is needed, but not well -- だ. 炊きあがった色白の生地をみて私はぼやく. 写真のきつね色とはだいぶ違うそれは私の script-kiddiness を暴いていた.

Hackers & Homemakers

多くの場合, 私達はハックの, あるいはハックに限らずソフトウェア全般の "not well" を "運用でカバー" する. 炊飯器調理も運用によるカバーが必要で, そこが利用者の腕の見せ所になる. たとえば, 次のようなトラブルシュートが primer に掲載されている:

本書によれば, 炊飯器調理者は "自宅の炊飯器のクセを把握" する必要があるという. そして材料の量, 炊き時間を微調整するのだ .ディスク音に耳を澄まし絶妙のタイミングで 'OK' キーを押す類稀な art のために休日出勤を強いられるベテラン保守担当者を想像, 世界のリアルタイム性が意味するところに嘆息した.

炊飯器調理はまた, ブラックボックスを開けるという基本的なハック戦略の一つにも符合する. 本来ブラックボックスである炊飯器の "炊き上がり" 検出を "水分がなくなった時点を炊きあがりとみなす" ものと仮定しているのだ. (だからこの仮定が使えないスープ料理には注意書きがある.) この戦略は炊飯器のスケーラビリティを犠牲にしており, それがハックらしさを醸している.

このように炊飯器調理はまさしくハックであり, それを考案した料理研究家は炊飯器ハッカーに違いない. さて, ここでレシピのもつアルゴリズム性を思いだそう. 分岐(フレッシュバジルがなければ...), 変数( "1" を "2" に加え...), 繰り返し(とろみがでるまで...), これはコードそのものではないか. そこで大胆に仮説を推し進めるなあら, 料理はハックであり, 料理人, さらに すてきな奥さん はハッカーであると言えるかもしれない.

Lisp が使えない私は 画家との比喩 ほど強気にはなれません.